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「あ、そ。
なら、別にいいんだけど」
カバンの中にあるタオルで、とりあえず、手を拭きたい。
「じゃ、後でね」
「……いやっ!ちょっと待ったっ!」
サッサと制服を翻すあたしを
なぜか真っ赤な顔で、呼び止める。
(あ、なるほどね……アレかぁ……
奈緒かな?華絵かな?)
確かに可哀想だから
女子トイレの真ん前から少しだけ、移動してあげる。
多分、あたしは、恋のキューピット。
横長に連なる窓から、爽やかな春風がそよぐ中……
あたしは、思いっきりジロジロと、田中くんを観察する。
(うーん……割と、普通)
髪も制服も、多少崩しているけれど
特に、不良ってわけでもない。
背も低くもないし、太ってもいない。
顔も、驚くほど美形でもない代わり、カッコ悪くもない。
(田中くんは……きっと、華絵だな!)
中学に入って、仲良くなった二人。
スレンダーで、まあまあ美人系で、ハッキリスッパリ辛口の……奈緒。
女の子っぽくて、のん気な天然風味で、小さくて可愛いのに
同時進行彼氏が、いつも何人もいる……華絵。
(普通の田中くん、華絵のロリロリフェイスに、堕ちちゃったね!)
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