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「うわ!ヤバ!
教室、戻ろう!」
田中くんだって、授業をサボるマズさは、わかっている。
二人とも、不良になんてなり切れない。
あたしたちは、グラウンドから昇降口へと猛ダッシュ。
「風亜、遅い!」
既に走り疲れていた、あたし。
その鈍足ぶりを、彼は見かねたのか……
「たっ、田中くんっ……
手、手、手ぇええっっ!」
ザラッとした右手が、あたしの左手をガッチリつかんでいた。
(あたしの手、汗でベッタベタだよぉ……)
乙女チックな恋愛シーンが、またもや遠のいていく。
「オレ、有樹だからっ!」
斜め後ろから見える彼の耳たぶは、また真っ赤。
「有樹!」
前を向いて走ったまま、叫ぶ。
「……ユ、ウキ……くん?」
「こっから始めるなら、イイんだろっ!」
きっと、ヒドい感触のあたしの手……
ユウキくんは、ギュッと握って、グイグイ引っ張ってくれる。
おかげで、見る見るうちに、校舎が近くなる。
「うん!
……ありがと!」
手のひらから体中に、ふわふわが、広がっていく。
(もうちょっとだけ、味わっちゃってても……いいよね?)
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