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突然頭を抱え、目の前で座り込む、田中くん。
(君は……フツウじゃなくて、ヘンナヒト?)
「オレが好きなの……
相田、お前なんだけど」
しゃがんだまま、上目づかいの田中くん。
固まる、あたし。
(どええええええっ?!)
心の雄叫びは、音にすらならない。
(相田風亜、中等部二年……
よりによって、女子トイレのそばで
生まれて初めて、コクられたぁ!!)
そして……
あたしが、何か答える前に、うやむやのまま
やって来た英語教師に、教室に詰め込まれて……
(……納得いかない!)
教卓の前の席の背中を、あたしは睨み続けている。
授業なんか、そっちのけ。
午後のノートは、字の上手な月ちゃんに、最初っからコピーを頼む予定。
でも、田中くんは、さっきまでの出来事が嘘みたい。
他の生徒と変わらずノートをとる、後ろ姿。
のん気な紺ジャージまで、なんだか恨めしい。
(記念すべき初コクられが、トイレの後なんてっ!)
手はビショビショだったし、髪も直さなかった。
顔だって、きっと、テカっていたに違いない。
ロマンチックもエロティックも、欠片もない。
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