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(……ありうるなぁ)
なのにあたしは、至近距離に男子がいることに、やけにドキドキしてしまい……
田中くんに、問いただせない。
アスファルトを割って咲くたんぽぽと、焦げ茶の指定革靴ばかりが、目に入る。
(乙女な、あたし……なんか違うっ!)
「田中く……」
「相田っ!」
タイミングがいいのか悪いのか、田中くんの言葉がかぶさる。
「ごめんな……」
困ったような横顔で、あたしに目も向けない。
「こんな風になるつもり、なかったんだけどさ」
(やっぱり嘘なんだ!)
ちょっとでも、浮かれた自分がバカバカしい。
自転車を押して、歩いて帰ることまでも
面倒くさくなってきた。
「別に、わかってたから、いいよ。
……そうだ!田中くん、自転車漕いで!」
あたしは、ハンドルをパッと離す。
自転車が倒れる前に、意外とゴツい指が、がっちりつかんだ。
「後ろ、乗っけてよ!」
「……いいのか?」
隣でバッチリ視線が合うと、昼休みと同じ赤い顔。
立ち乗りで、田中くんの肩につかまると
予想通り、耳まで朱に染まる。
(純な、田中くん!
きっと周りは、からかいたくなっちゃうんだ)
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