タバコ

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 煩い。 隣の部屋で馬鹿みたいに騒いでいる3人(厳密に言えば2人)を、心底煩いと思った。 悟空は俺との喧嘩を忘れたようにぎゃあぎゃあと騒いでいる。 しかし俺とはまともに喋ろうとしないのだから、忘れた訳ではないだろう。 俺はといえば…正直な所、もうあまり気にしてはいない。 それに、このままだと頭の中がアイツでパンクしそうになるから、本当の所はどうにかしたいと思う。だが。 俺から謝るなど出来なかった。はっきり言って、ダサい。  茶でも淹れるか。そう思って、ため息をついた後に椅子から立ち上がった。 「…?」  気付くと、隣の部屋が静かになっている。  ドアの向こうに人の気配がした。ノックもせず扉がゆっくりと開く。 「今、いいかな…?」  思い切り腰の低い悟空が入ってきた。 別に拒否する理由もなかったから、何も言わなかった。聞こえていないフリをして、急須にお湯を注ぐ。 「三蔵」  蚊の鳴くような声。そんなんじゃ聞こえねーだろぉが。 「…三蔵、ゴメン」  いつの間に後ろにいたのか、悟空が後ろから抱き付いてきやがった。 チカラが強いんだよ。苦しいじゃねぇか。 「俺…やっぱ三蔵に見ててもらえないと…なんか、よくわかんねーんだけど……」  声が直接背中を伝わって、俺の体の中で響く。久しぶりの感覚にほんの少し安堵する。 求めていた感覚なのに、素直に受け入れられない。損な性格。 「文になってねぇ 「…嫌いに…ならないで…っ」  俺が喋り終わる前に、死にそうな声で言った。 「俺、三蔵に嫌われたら死んじゃうから。そんなコト、考えた…だけで、アタマおかしくなりそうで…だか、ら、お願い…嫌いに、なら 「ならねぇよ」  今度は悟空が喋り終る前に言ってやった。抱きついていた小さな体が、震えていたから。 腹の辺りにある悟空の腕を半ば無理やり剥がして、向き直って抱きしめてやった。 背中のところ、涙でメチャクチャ濡れてんだよ。 「三蔵」 「なんだ」  コイツ、声まで震えてやがる。 「好き」 「・・・・」 「好きだよ」 「…知ってる」  たまには、素直になってやってもいいか、などと思ってしまった。 悟空といると、知らない俺が見えてくるから。
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