477人が本棚に入れています
本棚に追加
煩い。
隣の部屋で馬鹿みたいに騒いでいる3人(厳密に言えば2人)を、心底煩いと思った。
悟空は俺との喧嘩を忘れたようにぎゃあぎゃあと騒いでいる。
しかし俺とはまともに喋ろうとしないのだから、忘れた訳ではないだろう。
俺はといえば…正直な所、もうあまり気にしてはいない。
それに、このままだと頭の中がアイツでパンクしそうになるから、本当の所はどうにかしたいと思う。だが。
俺から謝るなど出来なかった。はっきり言って、ダサい。
茶でも淹れるか。そう思って、ため息をついた後に椅子から立ち上がった。
「…?」
気付くと、隣の部屋が静かになっている。
ドアの向こうに人の気配がした。ノックもせず扉がゆっくりと開く。
「今、いいかな…?」
思い切り腰の低い悟空が入ってきた。
別に拒否する理由もなかったから、何も言わなかった。聞こえていないフリをして、急須にお湯を注ぐ。
「三蔵」
蚊の鳴くような声。そんなんじゃ聞こえねーだろぉが。
「…三蔵、ゴメン」
いつの間に後ろにいたのか、悟空が後ろから抱き付いてきやがった。
チカラが強いんだよ。苦しいじゃねぇか。
「俺…やっぱ三蔵に見ててもらえないと…なんか、よくわかんねーんだけど……」
声が直接背中を伝わって、俺の体の中で響く。久しぶりの感覚にほんの少し安堵する。
求めていた感覚なのに、素直に受け入れられない。損な性格。
「文になってねぇ
「…嫌いに…ならないで…っ」
俺が喋り終わる前に、死にそうな声で言った。
「俺、三蔵に嫌われたら死んじゃうから。そんなコト、考えた…だけで、アタマおかしくなりそうで…だか、ら、お願い…嫌いに、なら
「ならねぇよ」
今度は悟空が喋り終る前に言ってやった。抱きついていた小さな体が、震えていたから。
腹の辺りにある悟空の腕を半ば無理やり剥がして、向き直って抱きしめてやった。
背中のところ、涙でメチャクチャ濡れてんだよ。
「三蔵」
「なんだ」
コイツ、声まで震えてやがる。
「好き」
「・・・・」
「好きだよ」
「…知ってる」
たまには、素直になってやってもいいか、などと思ってしまった。
悟空といると、知らない俺が見えてくるから。
最初のコメントを投稿しよう!