1829人が本棚に入れています
本棚に追加
6月20日
14時14分
ある町のある場所。一人の少女が息を乱しながら走っていた。
辺りには舞い上がった砂煙と、破壊された様々な建造物が混在している。
(早く、早く! まだなの!? まだ経ってないの!?)
彼女の左手には灰色の手の平に収まる程の大きさの立方体が握られ、今それを全力で降りながら彼女は走っていた。
辺り一面から金属音と爆発音が響いている。
(何でここにいるって分かったの!? しかもこんなところで戦うなんて!?)
ふと、彼女の右目に元は服屋であったであろう店の残骸が映った。
(私はあの人を助けなきゃいけないのに!)
彼女は右手に付けたデシタルの腕時計を見た。
時計は14時20分を指している。
(後2分……逃げきれるかな?)
そう思った直後だった。
砂煙が舞い上がる視界の中で、一カ所、たった一カ所赤い染みのような物が、少女の視界に入った。
(………………え?)
彼女の思考は一瞬固まり、その脳内を"何故?"という言葉が満たした。
何処をどう少女が考えても、この場で赤い染みを発見するはずが無かったからだ。
気づいたら少女は赤い染みの前に、立っていた。
赤い染みの主は虚ろな眼を憎らしい程の蒼い空にただ向けていた。
赤い染みは広がり続けている。
最初のコメントを投稿しよう!