母の手紙

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母の手紙

拝啓 秋も深まってまいりましたが、お元気でいらっしゃいますか。  私は、ご承知の通り、相変わらず病院のベッドで、わずかばかり窓からのぞく紅く染まった木々を眺めて、なんとか季節の移ろいを感じる、そんな生活が続いております。屋外に出ることが減ったというだけでなく、体や心の感覚も日々衰えているように思います。  娘が大変お世話になっております。まず、そのことを心から感謝いたしたく思います。扱いやすい娘でないことは、誰よりも私が承知しております。先生には、よく娘を受けとめていただいていると、しんからそう思ってありがたく思っているのです。  お送りしたノートの山をご覧になって、更にその内容を(もし、もうお読みいただいたとすれば)お読みいただいて、大変驚かれたことと思います。このようなものを、この三年間書き続けて来た母親というものを奇異に思われたこととも思います。また、なぜ、これらのノートが先生に送られることになったか、いぶかしく思われたことでしょう。
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