Prologue

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  こんな筈、ではなかった。     赤く染め上げられた夜空には黒煙が立ち昇る。   その漆黒は、煌めく星々と青白く淡い光を放っている月を覆い隠し、その赤色をより引き立たせて視界全てを赤く、赤く塗りつぶしていく。     守りたいものがあった。   成し遂げたいことがあった。     --弱き者は死に、強き者が生き残る。 善人である程虐げられ、悪人が白昼堂々と横行するこの世界…。     こんな腐れきった世界を、少しでも人に優しい世界に変えたいという一心だった。     だが、目の前に広がるのは灼熱の炎に侵蝕されていく街並み。   辺りには、炭と化してしまった夥しい数の黒い物体。   それはもう、ヒトとは形容し難い姿になってしまった、人型のオブジェ。   灼熱の赤の奔流は全てを飲み込んでいき、後に残ったのは、炭と灰のみであった。       この日、一つの街が一夜にして滅んだ。
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