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「ねぇ…」
不意に呼び止めた彼女は僕に歩み寄り、顔を覗き込む。
先程の場所から数分くらい歩いた先での彼女の行為だ。別に急いでる訳じゃないが、それでも゙意味成さぬ゙ものなら短縮して欲しいと、微かに僕は感じた。
「なんだい?」
それでも顔色変えずに、不思議な顔だったのだろうか?などと思うようにして、僕ば普通゙に、彼女の行動に対して言葉を返す。
「名前がないのは不便だから、仮名をあげるよ。」
そう彼女は紡いだ。
少し冷たい思考だった僕ではあったが、その言葉で確かに不便かもしれない、と思った。
僕だけであるなら、名前なんで不要゙だが、彼女が存在するなら必要になってくる。
僕はそう思考を凝らしながら感心を抱いたが、同時に不思議な疑問を感じた…。
「ねぇ、嫌?」
再び彼女は僕に声を紡いで、その思考を中断させる。
「…分かった、じゃあヒナにお願いしようか」
疑問を感じつつも、どうせ分かりもしない思考を巡らすくらいならと、その疑問を僕ば消しでしまう事にした。
「今は名前が無いから、名無(メイム)って名前なんかどうかな?」
単純、と思った。
だが所詮反対する理由もないので…
「それで良いよ」
そう素っ気なく答える。
「よし、じゃあメイムだ。
端整な顔なメイムにはピッタシだよ♪」
顔の評価など興味はなかったが、ただ僕はどうやら自分の存在を少し知れたようで、゙嬉しい゙と言う感情が生まれたのが分かった。
「今まで存在は固定化されていなかったっけ?」
不意にそう訪ねる僕は自分に驚きを示した。
だって僕は自分を知らない、無の存在だったから、なのだが…。
「私には解んないよ」
分かりきったようにヒナはそう答えるだけだった。
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