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客は落ち込んだ顔をしながら帰っていった。
「……流也ぁ」
「ごめん善ちゃん…逃げちゃった」
半睨み状態の僕の目線に笑顔でそう答えた流矢。
「…ったく」
「マジでごめん!!今度何かおごるから許して」
手を顔の前で拝むように合わせてそう提案してくる流矢、どうせ自分ついでで買ってくるおごりになるのは分かってる。
さて…どうするかと僕は考えを巡らせ始め、その安いおごりで流矢を許す事にして開店準備に取り掛かった。
流也は良く客の忘れた煙草を吸う、別に金が無い訳ではないのだが前に理由を聞いてみた、そしたら本人は『節約!!』と言っていた……何じゃそりゃ、まぁ煙草を吸うようになったのは僕が薦めたからなのだが…。
「よし、じゃあ今度こそ開店しよう」
「はい、それじゃあ皆さん今日1日よろしくお願いしま~す!」
流也の開店開始の時に必ず言うこの言葉でこの店は営業時間までを過ごす。
こんな何処にでもあるような感じで僕は店の人達と流也と楽しく充実した時間を過ごしていた。
この頃は本当に大切なものは母と兄・妹だけだった。
父が亡くなってからは特に家族が大切になり、家族みんなが家族の心配をしていた。
「ただいま~」
仕事が終わって家につくとみんな寝ている時間だ、いつからかは覚えていないが帰ってきたら母・兄・妹の寝顔を見てから寝るようになった。
多分自分の不安、家族がいなくなってないかという不安を消したいから見てしまうのだと思う。
家には大抵寝に帰ってくる、昼と夜の生活が逆転しているために最近はほとんど家族のみんなとゆっくり話しが出来ていない。
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