第一章《枯れたモノ》

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  科学技術は目覚しい進歩を経て、ある種の過渡期ともいえる時期に入っている。 様々な新資源が発見され、様々な新素材が開発され、様々な新技術が考案され、様々な新機材が制作された。 目視不可能の極々細密な部品や超高温を維持する燃料、亜音速に到達する旅客航空機や神経を再生する薬品等々。 その中でもロボット技術も素晴らしい進歩を遂げた。 繊細な力加減の操作を可能にする人工筋肉。 モース高度14以上、ダイヤモンドに次ぐ硬度でありながらも軽量化が図られた鋼鉄骨格。 人と同じように教育すれば成長し、また環境によって人格の変化に富む人工知能。 ロボットは人が到達出来ない環境を容易に進行し、人が行使出来ない技能を発揮してみせる。 宇宙を泳ぎ、星を渡るロボットがあった。 深海を歩き、放射能廃棄物を埋めるロボットがあった。 溶岩を潜り、大陸プレートを測定するロボットがあった。 それらは主に研究及び作業用の特化型だが、それ以外にも一つ、制作されているロボットがある。 《オート・ロイド》と呼ばれるモノがある。 ロボットは予てより、人を創り上げようという目標があった。 人と同じ身体を、人と同じ機能を。 人のように生活し、人のように考える。 人と同じように在ることで、人の良きパートナーになるように。 そして、それは実践された。 鋼で作られた軽量骨格、それを覆うように人工筋肉が編まれる。 光ファイバーで結われた神経を張り巡らし、新開発された人工皮膚を着せていく。 勿論、ソレに収められるのも人と同じ。 摂取した食物を吸収しエネルギーに変換する胃腸、身体を常に監視し有害物や老廃物の処理を行う肝臓や腎臓等、身体を構成し維持する機能を持つ装置は全て内蔵。 眼球や鼻、舌や鼓膜等の感覚機関も設置。 それらを統括する人工知能は様々な人格、価値観、嗜好を設定出来るように人工脳髄にインストール。 そして完成されたのは自動機人(オート・ロイド)。 人によって組み上げられた、都合の良い絡繰人形だった。
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