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今日は友人が企画した小さな飲み会があった。
だが俺は生来、付き合いが良いとは言えない。
中学の同窓会は顔を出して一次会で解散、高校の文化祭等の打ち上げはいつも隅の席、友人に誘われたって一~二杯程度で終わらせる。
そんな俺の手を引っ張り、強引に連れ出す友人。
オィ、俺は男と手を繋ぐ趣味など無い。
「お前なぁ、ほんの少しだけでもいいから付き合えって。今日のメンバーはスゴイぞ?綺麗から可愛い系まで、初心なロリやナイスバディなお姉さんまで勢揃いだ。……くぁー、俺頑張ったってつくづく思うね」
これからさらに頑張るけどな!と、彼は喜び勇んで居酒屋への道程を先導する。
一応知人だ、友の努力が報われることを願いたい。
「そんな顔しないでお前も女の子口説いてみろって。女の子はいいぞ。特に柔らかおっぱいと丸っとしたお尻は至宝だね!」
撤回、泡沫と化せと呪ってみる。
見事に俗世間の色欲に溺れきった言を流しながら溜息。
栓無きことかと心中で呟きながら、俺は居酒屋に足を踏み入れたのだ。
―――それで、だ。
「阿呆が、お前たちが飲まれてどうする」
酒とは基本、計画性を以って嗜まなければならない。
アルコールとは人体にとって有害な物質であるために、人の脳を麻痺させ酔わせる。
故に自らの代謝能力を把握し、飲む量や質、ペースを調整しなければならない。
それを無視して飲み続ければ当然、脳がシャットダウンして酔い潰れるだけだ。
丁度、目の前で酒気を遺憾無く漂わせる狼の成り損ないのように。
座敷に大の字で潰れるなんていっそ清々しさすら感じるな。
「あの、その人たち、大丈夫ですか?」
参加していた女子が幾人か、心配そうに視線を向けている。
女性は男性よりいくらか精神が育っていると聞くが、この状況でその実を垣間見た気さえした。
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