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「あぁ、おそらくは平気だろう。タクシーに放り込んで帰ってもらうことにする」
「はぁ、そうですか。私たちこれからカラオケに行こうと思ってるんですけど、お兄さんもどうですか?」
短い茶髪の女子に促され後ろを見れば、男性陣の生き残りは俺以外に三人ほど、酒に慣れた連中だろう。
それに比べて女性陣は半数以上酩酊とまでは至ってないほろ酔い、といった状態だった。
なんて情けないと溜息一つ。
「いや、此処に転がってる馬鹿共を片付けねば。それに会で判ったと思うが、俺は面白味の無い方でな」
そして正直な話、とっとと帰りたい。
「俺よりも其方の男子がエスコートしてくれるだろう。それでも酒が入ってるから送り狼に注意することを勧める」
女子よ、君の後ろに戯言を吐いた阿呆の同類がいるのだぞ?
割と本気で注意したのだがその言葉に彼女はあははと小さく笑い、少し細い目をさらに細めた。
「そうですね、その点お兄さんは殆ど素面ですし」
「前後不覚になるほど飲まなかっただけだ。これでも多少は酔っている」
「それでもテンション変わっていないですから大丈夫だと思います。それにちょっとお願いしたいことがあって。隅の方にいる子たちなんですけど」
「アレか。電車で来たのかもしれないが、近いならタクシーを呼ぶか?」
俺の提案に、律儀にもお願いしますと返された。
「お兄さんが送り狼にならないでくださいね?」
「……生憎と、勢いで襲えるほど酔っていない」
もう一度溜息、対して女子は酒の入った赤ら顔で笑みを浮かべる。
「ああ、それから」
そして二次会メンバーが店を出るその直前、先の女子が戻ってきて。
「お兄さんは自分のことを面白味が無いって言ってましたけど、結構人気ありましたよ?」
それじゃあまたー、と店を出て行く茶目っ気溢れる女子……もちろん、世辞だ。
それを見送った後、俺は店員を呼んだ。
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