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男の左手はもう使い物にならなかった。爪は全部剥ぎ、塩を摺り込んでいたから水分は無く、5本の指とも骨を折っている。だが男は叫ぶことはなく、ただ呻き声を出しただけだった。
「ほう、少しは漢を見せたか。どこまで耐えられるかな」
だが、男の抵抗は儚かった。足の爪を全て剥ぎ、塩を摺り込んだ。それで男は喚いた後に気を失い、熱湯を持って来させて男にかけると目を醒まし、叫び始めた。
私はまだ拷問を続ける。そうすると、男は急に静かになり、焦点が合わなくなったような目になった。後少しだった。私はより一層厳しい拷問を続けた。やがて男はゆっくりと目的の情報を語り始めた。私はそれを一言一句間違わずに紙に記録した。
私は拷問した人間を殺すことはしない。最後まで利用する、それが私の信念だ。何かの過ちで、死んでしまった人間でさえも利用したことがある。
私はその記録した紙を私の上司にあたるKに渡しに行った。正式にはKo-Li〈コー リー〉と呼ばれているが、本名ではないらしい。
「やっと吐いたか。ご苦労だったな、旭」
Kは背丈は短く痩せている。常に黒で全身を包んでいるが、Kが付けるマスクだけは白だった。Kが喋る度に白いマスクが目立つ。
「これが私の仕事です、K。それより[次]を回してください」
私は言う。何故か、今ならどんな相手でも情報を吐かせてやるという執念に満ちていた。
「お前がそう言うなら、分かった、[次]を回そう。いつも助かっているぞ、旭 徹〈アサヒ トオル〉」
ありがとうございます、そう簡単に返事をし、私は拷問のための部屋に向かう。その部屋は研究所の外れにある。
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