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その彼女は、じっと私の顔を見つめている。何と声をかければいいか分からず、私はとりあえず歩き回った。私が彼女の近くを歩いた時、今まで微動だにしなかった彼女が動いた。さの瞬間、私は腕を掴まれていた。
そこから見た光景は、摩訶不思議だった。
誰の視野かは分からない。暗く、狭い部屋だった。だがその視野に映っている3人は、私が見ている視野の者の家族だと分かった。
見る限り、両親と弟。真正面の壁だと思っていた壁が開き、部屋に光が射し込む。扉だったようだ。2人、人が入ってきて、最初にこの者の弟が連れていかれる。両親と思われる、母が必死に連れていこうとする1人にすがり付く。
だが母と思われる者の腹に蹴りが入れられ、母は踞(うずくま)る。
次に扉が開いた時、母が連れていかれた。母はレイジと叫び、次にシズカと叫ぶ。私はその時気付いた。この視線は、静。彼女の視線だ、彼女が体験したことだ。
再び扉が閉められる。部屋が闇に包まれた時に、男の声がする。
「シズカ、生きろ。わしたちの分まで生きるのだ。必ず、この社のこの実験は暴かれる。シズカは、それの引き金となれ」
扉が開いた。光が射し込むと同時に、父親は立ち上がっていて、大人しく連れていかれた。
扉が閉まり少しの間があっただろうか、4回目である、扉が開いた。先程までとは1人増えていた。次は、自分――。
部屋の外に出て、増えた1人の顔を視界が捉えた。見慣れたマスク、それは――K。
Kの顔を見た刹那、景色は変わり、次に映るのは、先程の家族3人の死体だった。
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