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激しい金属音が、月明かりに照らされた荒れ地に響いた。
ここは戦場。戦っているのはガラクタを組み合わせたような5メートル程の金属製の巨人。生身の人は一人もいない。マントを身に纏った少女を除いては。
彼女は岩場に隠れながら自前の短銃に弾を込めた。
短銃と言うわりに2メートル以上もある異様な大きさの銃は、人間が撃てるような代物ではない。もとより巨人達の物であったそれを更に改造した銃は、重量も威力も遥かに向上していた。
その威力は、人より強大な物を粉砕する為にある。
撃った時の反動には、生身の人間はまず耐えられない。骨は砕け、引き金を引いた方の腕はもう使い物にならなくなる。
だが、彼女は耐えられた。
それは何故か――
突然激しい轟音と共に突風が吹いた。……いや、“爆風”だ。
その爆風のせいで彼女の身に纏っていたマントが捲れ上がった。
月明かりに、彼女の姿があらわになる。
長く美しい金髪。色白な肌。整った顔立ち。16歳にしては少し発育不足とも思える体つきだが、それでも彼女は美人と呼べる。
しかし――、
彼女の左腕は、金属で出来ていた。
発砲時の反動に耐えられるのは、彼女の左腕が人間のそれではないからだ。
彼女は、爆風が起こった方を見る。
戦っていた2体の巨人のうち、1体が粉々になっていた。
おそらく、もう1体にやられたのだろう。
手間が省けた、と、彼女は薄く笑みを浮かべた。
彼女は、足元に置いていた重そうな銃を左腕で軽々と拾い上げ、もう1体の巨人に向かって構えた。
そして、引き金を引く。
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