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あれは、確か私達が中2の頃…
私の双子の兄・水輝(ミズキ)はやけに喜んでいた。
彼女ができた、と…
「泉水!俺の彼女の朱夏(アヤカ)」
彼女だと紹介して来た時は、すごくショックだった。
水輝とは校舎が違って、学校ではほとんど会うことはない。
…私の知らない間に…って、思った…
水輝の彼女・朱夏さんはすごく綺麗な子で、でも同い年。
ほとんどというか全然話したことはない。
「み…ずきのバカァ!」
私はそれを言うことが精一杯で、言い逃げのようにその場から走り去っていた。
いつも一緒だったお兄ちゃんが離れていくことが堪らなく嫌で…
浮かぶ涙を拭かずに渡り廊下をがむしゃらに走っていく。
霞んで前が見えないことなんて気にならない。
ドンッ!
「ぅにゃっ!」
誰かに当たったはずなのに、逆に私が尻もちをついてしまう。
「大丈夫?」
聞いたことのある声。
顔を上げると、そこには水輝の親友の坂上翔(サカノウエショウ)。
私はこの男が大っ嫌いだ!
「平気よ!」
差し延べてくれる手を払いのけ、私は立ち上がって再び駆け出した。
坂上は2年の春に、水輝が友達になったムカつくヤツ。
何よりも許しがたいのは四六時中、水輝の側にいる!
それが一番許せない!
故に、大っ嫌い!
──水輝に彼女ができたこと、今思えば…ただ…悔しかった…
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