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「ついでに子供もできちゃった」
水輝は何がそんなに嬉しいのか、ヘラヘラと笑っている。
バンッ!
私の中で何かが切れそうな気がして、テーブルをおもいっきり叩きつけた。
「信じらんない!突然の家への呼び出し!何かと思ったら結婚する!?」
やり場のない怒りが込み上げてくる。
怒るなんて思ってもいなかったのか、目を丸くして驚いている両親と兄。
彼女・朱夏さんは動じてすらいない。
「私は反対よ!認めないんだからぁ!!」
俗に言う捨て台詞を吐き、実家を飛び出した。
流れる涙を拭おうともせず、自分のマンションではなくある場所に向かって走る。
不思議そうに見てくる通行人なんて気にしてられない。
水輝がどんどん離れていく寂しさが耐えられなかった。
私1人だけ置いてきぼりにされてるみたいで…
お兄ちゃんは…どんどん離れていく…
バンッ!
目的地である5階建てマンションの1つのドアを勢いよく開けた。
この部屋の住人は家にいる場合、夜以外鍵がかかっていない。
なんとも不用心。
「楓~!」
「泉水?どうしたの?入ってきなよ」
高校からの親友・三本楓(ミモトカエデ)の声は、部屋の奥から聞こえた。
「聞いてよぉ!水輝のヤツ結婚するって!」
靴を脱いでズカズカと上がり込みながら怒鳴り散らす。
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