第壱章:撃てない軍隊

7/13
前へ
/28ページ
次へ
「待つんだ八島三佐!!」 「攻撃されているんですよ!!目標の攻撃意思は明らかじゃないですか!?」 「ロックオンされた!回避する!!」 「高濱!!」 ニ番機の高濱が目標にロックされた。 コクピットの警報機がピーピーと悲鳴を上げる。 高濱は機体を右へ左へと旋回し回避を試みるが警報機が鳴り止む気配は無い。 ただでさえフランカーの装備する短距離ミサイルはヘッド・マウント・ディスプレイにより機首方向に関わらず発射する事が可能だ。 要するにパイロットが敵機の方を向けばロックオンできてしまうのだ。 「待ってろ高濱!」 八島が機を翻し救出に向かう。 たがフランカーは既に高濱への攻撃態勢に入っている。 「高濱!上だ!!」 八島の叫びが聞こえた刹那、巨大なハンマーで叩き付けられたかの様な衝撃が高濱を襲う。 「ひ、被弾!!右エンジン被弾した!!」 警告灯が点灯し、先程とは違う警告音が鳴りはじめる。 瞬く間に右エンジンの排気温度計と回転計が下がりだす。 「高濱!フューエルカットだ!急げ!!」 「りょ、了解!」 高濱の機体はもうもうと黒煙を吐きながら片ばい(片発)で何とか飛行を続けている。 左右の推力バランスが崩壊したため高濱は左のヨーペダルを思いきり踏み込んでいるが、それでも機体は右へ行こうとする。 それを押さえ付けるためにやや機体を左に傾け何とかバランスを保つ。 だが目標、いや、もはや敵機と言うべきだろう。 敵機がその状態を保たせてはくれない。 再び被ロックオンを表す警告音がコクピットを騒ぎ立てる。 八島三佐は敵のニ番機と思われる機体とドッグファイトを繰り広げながらも高濱に助言をし続けている。 八島三佐は先日飛行教導隊にスカウトされ、既に移動が決まっている。 飛行教導隊とは空自の腕利きが集まる言わば操縦のエリート集団である。 八島三佐はそこにスカウトされる程の技量の持ち主だが、主翼を破損し高濱に助言しつつとは言え、敵ニ番機は八島三佐と互角に渡り合っている。 相当の手練(てだれ)だ。 「GCI!ソードが攻撃を受けて右エンジンがぶっ壊れたのに反撃してはならないのか!?」 「……やむおえん。正当防衛だ。団司令も許可された。これより目標を敵と識別!早急に駆逐せよ!」
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

78人が本棚に入れています
本棚に追加