第壱章:撃てない軍隊

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同時刻 航空自衛隊嘉手納飛行場及び嘉手納GCI(地上要撃管制) 「GCIより緊急通達!嘉手納基地より2機を増援として発進させよ!」 「エルボー3、4、エンジンスタート緊急上がれ!!」 「那覇コントロールに対し航空路緊急閉鎖命令発令!航空路Y(ヤンキー)26、62、52、27、531、G(ゴルフ)581、R(ロメオ)583を緊急閉鎖!該当航空路を飛行中の機は別命有るまで上空待機させよ!!」 「那覇空港に通達、該当航空路使用予定航空機は即刻離陸を中止、離陸済みの機に付いては上空待機及び緊急着陸の措置を取れ!!」 沖縄本島北方約10浬の上空 「先輩!いまだロックされています!!」 「エルボーフライト、増援が2機発進した。持ちこたえろ」 直後、警告音が一変し高濱に敵機のミサイル発射を知らせてくる。 高濱は必死に回避を試みるが、片発だけでは推力が足りない。 ここまでかと思った瞬間、警告音がぱたりと止んだ。 すると、左後方から突然八島機が現れた。 後方にミサイルを引き連れて。 「先輩!!」 八島はフレアを放出しつつ急旋回し回避を試みるが、ミサイルはどこかのシューティングゲームのように馬鹿正直に現在位置を追ってきたりはしない。 目標の未来位置を予測し、最短距離で目標を追尾する。 ミサイルはフレアを見向きもせず八島との距離を詰めてくる。 八島は直撃の寸前、操縦桿を逆側に入れ、右旋回中の機体を左に急旋回させた。 追随不可能と判断したミサイルは即座に近接信管を作動させた。 破片が八島機に容赦無く降り注ぐ。 八島のF-15はたちまち制御を失い黒煙を吐きながら高度を下げていく。 「先輩!脱出してください!!先輩!!」 応答する様子も、脱出する様子も無い。 損害を被った敵機は、早々と逃げの態勢に入っている。 「GCI!エルボー1が撃墜された!エルボー1が撃墜された!!」
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