第弐章:新なる門出

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1番機、レイピア1に搭乗するのは、5年前の領空審判事件の際にエルボー2として中国軍機と空戦を繰り広げた高濱隆二一等空尉。 5年前から階級が2つ上がっている。 2番機は蔵増義昭三等空尉。 5年前の高濱と全く同じような状況だ。 だが、蔵増がスクランブルを経験するのはこれが初めてだ。 2機が滑走路に侵入する。 視界前方には、スクランブルのために着陸直前にゴーアラウンドを指示された海軍のP-3C哨戒機が高度を上げようとしている。 「RAPIER flight,runway 23L cleared to take-off.Wind 030 at 9.前方を退避中の海軍のP-3に注意せよ」 凄まじいアフターバーナーの音が辺りを包む。 2機は前方のP-3をかわし、編隊を組み上昇を開始した。 「RAPIER flight KADENA GCI,turn heading 030 angel 40.Follow data link」 「RAPIER 01 roger」 「Tow」 日本国政府専用機内 「……これはお見送りと理解してイイのかな駒田君?」 首相の瀬戸幸一は同乗している駒田裕介外相に苦笑いしながら冗談を言っている。 この期に及んでなんて余裕だと思いつつも、駒田は冷静に返答する。 「総理、空軍のデータリンクによれば中国軍機は常に当機を射撃可能な位置に付いているとの事です。冗談事ではないですよ?」 「……彼らはおっぱじめる積もりかね?歓迎しようじゃないか。ナメられるのは懲り懲りだよ」 那覇空港 「JAY-OCEAN 3601 NAHA tower,runway 36 cleared for take-off.Wind 030 at 9.Good-day」 『日本トランスオーシャン航空3601便、こちら那覇タワー管制、滑走路36からの離陸を許可する。風は方位030度から9ノット。さようなら』 「Good-day」 日本トランスオーシャン航空3601便は離陸態勢に入っていた。 機長は、フラップが離陸位置にあるのを確認してスラストレバー(スロットル)を半分ほど押し込んだ。 エンジンの出力が正常に上がるのを耳と計器で確認し、再びゆっくりとスラストレバーを押し込んで行く。 「V1」
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