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2011年 日本
景気はその重い腰を上げつつあるも、今だ低迷が続いている。
専門家は「日本はまだマシな方」だと言う。
確かにそうだ。
盟友アメリカ合衆国は景気が回復するどころか、すこぶる右肩下がりを続けている。
アメリカでの景気低迷は、周知の通り2007年のサブプライムローンの焦げ付きに端を発する。
更に、その影響による金融、経済バブルの崩壊。
それによるアメリカ第4の大手証券会社「リーマンブラザーズ」の破綻。
その影響は当然アメリカ一国に留まらず、世界中に経済危機をもたらした。
日本も例外ではない。
円高は輸入の利益を上げたが、技術の輸出による利益がGDPの大半を占める日本に取って円高はあまり歓迎できない。
予想通りそれは景気の低迷、雇用の激減へと繋がった。
アメリカ経済の下落は留まる所を知らず、国外からの輸出入も激減。
日本はやむなく輸出入主要国をヨーロッパ側へとシフトし、被害の軽減を計る。
アメリカも景気回復のためにあらゆる手を尽くすも、もはやアメリカ経済は地に落ちたような状態である。
財源確保の為にアメリカ当局は遂に大規模な軍縮を始めた。
世界各地で首を突っ込んでいた内戦や紛争から手を引かざるおえなくなり、世界中に駐留するアメリカ軍が撤退を始めた。
勿論在日米軍も例外ではない。
アメリカにとって日本から撤退する事は、事実上の日米安保の破棄に値する。
有り余る程の大型兵器はその殆どをモスボール保存。
アメリカ一国を守るのに80隻ものイージス艦は必要なかろう。
そして、2011年04月。遂に在日米軍は完全に撤退した。
当の日本の一般人にとってこれは、「イロイロと問題を起こしていた米軍がいなくなって良かった良かった」程度の出来事であろうが、事はそこまで簡単ではない。
下手をすれば国家存亡に関わる事態である。
アメリカが日本から撤退したという事は日本を守るのは自衛隊だけである。
勿論一般人は「自衛隊が居るから大丈夫だろ?」と言うだろうが、残念ながら自衛隊は米軍を補佐するための戦力である。
主役の米軍がいなければ、自衛隊は文字通り張り子の虎なのだ。
そう、ここにきて日本に降り懸かった問題はまさしく国防であった。
序章:終
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