第壱章:撃てない軍隊

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2011年06月14日 航空自衛隊 嘉手納基地 アメリカ軍はもう居ないので、嘉手納基地も大部分その姿を変え、面積は自衛隊用に減少。 一つの国のような基地だった訳だから。 今は航空自衛隊が使用している。 イロイロと騒がれた普天間基地は、アメリカ軍撤退により移設もクソも無かった事になり、そのうち基地ではない何かがあそこに建つ事になるだろう。 16:32 日差しの照り付ける中、それは突然始まった。 「エマージェンシー!エマージェンシー!」 警報機がけたたましく鳴り響く。 同時にアラート待機要員が一斉に動き出す。 「おい高濱、今日何回アラート鳴った!?」 「6回です!」 そう会話すると2人はそれぞれの機体のコクピットに乗り込んだ。 2人は同時に右手の人差し指をコクピットから突き出す。 慣性起動機始動の合図だ。 ゴロンゴロンと慣性起動機が唸りを上げ始める。 起動機が一定の回転に達した事を確認すると、続いて中指を突き立てる。 「右エンジン始動」 辺りをF-15Jの雷鳴のようなエンジン音が包み込むと同時に、右側エアインテークがガクンと下を向く。 続いて左エンジンも始動。2人は計器チェックを一部省略し、整備員へOKの合図を送る。 「ELBOW with 2 flight, checkin. KADENA ground, request taxi, scramble. Information D(デルタ)」 『エルボー2機編隊、チェックイン。嘉手納グラウンド、スクランブルによるタキシングを要求します。ATIS航空情報デルタを取得済み』 「ELBOW flight, cleared to taxi runway 23L(レフト). QNH 3018」 『エルボー編隊、滑走路23Lへのタキシングを許可する。高度計規制値は3018』 整備員が敬礼で2機を送る。 2機はゆっくりと誘導路を滑り出した。 1番機は八島 宏義三等空佐。 TACネームは「ルーク」。 2番機は高濱 隆二三等空尉。 TACネームは「ソード」。 高濱三尉はやっとAR(アラート・レディネス)になったばかりだ。 今日が初のアラート任務だというのに、既に3回目の発進。 交代前のチームも3回アラートがかかっていたから、今回で今日の6回目だ。 「ELBOW flight, contact tower, 315.8(スリーワンファイブ・デジマル・エイト). Good-rack」 『エルボー編隊、315.8MHzにてタワーと交信せよ。幸運を祈る』
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