第壱章:撃てない軍隊

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2機は問題無くディパーチャー管制空域外に達する。 管制塔から要撃司令室へと指揮が移管される。 「ELBOW flight,frequency change uploabed.Good-rack」 『エルボー編隊、周波数の変更を許可する。幸運を祈る』 「Roger,thanks」 すかさず、GCI(地上要撃管制)から無線が入る。 「ELBOW flight,vector to bogey,turn heading 290,climb and maintain angel 40 bygate.Follow data-link」 『エルボー編隊、不明編隊へ向け誘導、方位290度へ旋回、高度40000ftまでアフターバーナーを使用し上昇し、それを維持せよ。以後はデータリンクに従え』 「Roger,follow data-link」 「Tow」 2機は一気に仰角を取り、高度40000ftへ向けぐんぐんと上昇する。 高度計の針が吹っ飛びそうな勢いで回転を続ける。 「どうだ高濱?一日に3回も飛ぶと流石に慣れてきたんじゃないか?」 「ええ、おかげさまで……」 「ルーク、ソード、ミッション中だ、私語は慎め」 「はいはい、お硬いねぇ」 ヘッド・アップ・ディスプレイ(HUD)に目標の方位、距離がデータリンクにより表示されている。 無線により誘導すると、目標に察知されて身構えられる可能性があるからだ。 スクランブル機は、突然目標の近くに現れるのが望ましい。 だからレーダーも無線機も、アクティブな装置は全て切っている。 編隊は先程高度40000ftに到達し、水平飛行を続けている。 目標まではあと15マイル。 そろそろ見えてもいい頃だ。 「Tally-ho(タリホー),bogey」 『目標発見』 「目視確認了解した。接触、音声警告を開始せよ」 「Roger」 「Tow」 「レーダーコンタクト、目標は2。速いぞ、マッハ1.2。戦闘機か?」 (いきなりホットだったのはコノせいか……) 通常のスクランブルでは、不明機が防空識別圏に接近した所でC/S(コクピット・スタンバイ)が発令され、さらに接近するとB/S(バトル・ステーション)、この調子だと領空を侵犯すると判断されると、S/C(ホット・スクランブル)が発令されるのだが、今回はいきなりホットだったらしい。 「ソード、増槽を投棄しろ。接触する」 「Roger!」 2機は増槽を切り離すと機を翻し目標へと向かって行った。
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