第壱章:撃てない軍隊

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(ARになって早々、3回もスクランブルを経験するとは思っても見なかったな……) 旋回中の為にベルトが体をぐいぐいと締め付ける中で高濱は思った。 「ソード、後方でバックアップしてくれ。撮影を頼むぞ」 「了解」 イーグルの操縦桿のトリガーは、一段引くとガンカメラが作動し、さらに二段目を引くと20㎜バルカン砲が発射されるようになっている。 八島機は慣れた様子で目標編隊の真横へと近付いていく。 高濱は後方でバックアップ、撮影を担当する。 「目標はフランカー2機編隊、中国軍機と認む!これより音声警告を開始する!」 「了解した」 そう報告すると八島三佐は中国語で目標へ警告を始めた。 「注目せよ。注目せよ。こちらは日本国航空自衛隊。中国軍機に告ぐ。貴隊は日本の領空に接近している。直ちに進路を変更し、退却せよ」 目標に反応は無い。 「注目せよ!注目せよ!貴隊は日本の領空に接近している。直ちに進路を変更し、退却せよ!」 「領空まで20マイル!領空侵犯されるぞ!」 司令室から焦りの声が聞こえるが、中国語で何度も呼び掛けるが相手は全く反応しない。 飛行機、ましてや音速を越えた戦闘機に取って20マイルなどたいした距離ではない。 そうこうしてる内に領空侵犯を許してしまった。 「目標編隊は領空に侵入!強制着陸させよ!指示に従わぬ場合、警告射撃を許可する。実行は貴官の判断に任せる」 「……確認する。警告射撃を許可か?」 「その通りだ八島三佐」 「了解した」 高濱は八島三佐の声のトーンが変わった気がした。 八島三佐は再び警告を行う。 「警告する!警告する!貴隊は日本の領空に侵入している。直ちに退却せよ!繰り返す、直ちに退却せよ!」 八島三佐は声を張り上げる。 「貴隊は日本の領空に侵入している!これより貴隊を最寄の空港へ誘導する!了解ならば、減速し、ギアダウンせよ!」 再三呼び掛けるが、反応は無い。遂に八島三佐は警告射撃の実行を決意した。 「警告射撃を実行する」 「了解」
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