第壱章:撃てない軍隊

6/13
前へ
/28ページ
次へ
目標編隊のすぐ右で、八島三佐は実行を報告すると操縦桿のトリガーを引き絞った。 主翼付け根のM61 20㎜バルカン砲がモーターの駆動音を伴い唸りを上げ、曳光弾が空中に線を描く。 またも無反応かと思いきや、目標編隊は同時にエアブレーキを起て急減速。 高濱は急に自分の目の前に迫ってくるので、慌てて急上昇し回避する。 (応じたのか?) 八島は一瞬そう思ったが、それが間違いだと気付くのにさしたる時間は必要無かった。 後方から曳光弾が自機の左を飛び抜けて行ったのだ。 「エルボー・ワン、目標は当機に向け機銃を発射!」 「確かかエルボー・ワン!?」 「確かだ!!攻撃許可を求む!!」 「貴機は無傷なのだな?」 「被害無し」 「ならば反撃は許可できない。強制着陸させよ」 「何故だ!?」 「貴機を攻撃する意思があったのかが定かではないからだ」 そう言ってる間に目標は再加速。2機を一気に追い抜いていく。 「ナロッ!!……ナメてやがるな!ソード!続け!」 「了解!」 (ヤローめ、沖縄本島まで飛ぶつもりか?) 八島はまさかと思いつつも考えた。 だが既に沖縄本島は視界に入っている。 一刻の猶予も無い。 八島は英語で、厳しい口調で、漫然と飛行する中国軍機に再び語りかける。 「最寄の飛行場へ誘導する!減速、ギアダウンせよ!指示に従え!さもなくば実力を行使する!!」 「……自衛隊か。貴様等に何ができる……」 (何だ!?) 突然中国軍機が極微弱な電波で八島に英語で交信してきた。 「どうしたんです先輩!?」 どうやら高濱やGCIには聞こえてないらしい。 すると突然中国軍機は減速しつつ急上昇、そのまま1機がロールし背面降下の体勢に入った。 「先輩っ!ブレイク!ブレイク!!」 八島は操縦桿を右に倒し回避を試みたが間に合わず、数発の30㎜弾を被弾してしまう。 「エルボー・ワンよりGCI!攻撃を受けた!機関砲数発を左翼に被弾!!正当防衛により反撃する!!」 「待て!八島三佐!!」 「ELBOW 1, engage!」 『エルボー1、交戦!』 「E,ELBOW 2 engage!」 『エ、エルボー2、交戦!』
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

78人が本棚に入れています
本棚に追加