第一章

3/7
前へ
/24ページ
次へ
そんな死んだ様に生きていたせいだろうか。 今日は運が悪かったようで。 小さな交差点を横断しようとしたその時、左目がちらりとトラックを捕らえた。 その速度と俺との距離に、一瞬で血の気が引く。 死を直ぐに直感した。 優先道路だからと完全に油断していた。 大型車両が俺に迫っている。 これはぶつかる。マジで死ぬ。 そんな事が頭の中を瞬時によぎって、気づいた時にはもう遅かった。 「くっ……!」 黒板を爪で引っ掻いたような音が聞こえる。 トラックが急ブレーキをかけたんだろうが、それは無駄に雑音を出すだけで容赦なく俺に迫り来る。 そして俺はトラックと衝突した。 衝突音は耳鳴りのように俺の耳にいつまでも響いた。 ああ、死ぬのか。 だが、つまらない日常に意味はあったか? 死ぬのは嫌だろうか。 別にいいかもしれない。 だが、生きていればいつかこの日々は変わるかもしれない。 そう考えると、少し惜しいかもしれない。 そんな死ぬ間際まで優柔不断な自分が妙に可笑しくなる。 まぁ最終的にはどちらでもいいのだ。 全ては成るままに流されていくのが俺の処世術だから。 やがて意識は闇に飲まれて、少しずつ遠退いて行った。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加