いざ、東へ

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『あの男に会ったことが?』 『あの方を知っておいでですか』 老人は特別驚きもせずそう言った。相変わらず遠い目をしている。 『まだあのお方が駆け出しの時です。体術の知識を一月ほど教えて差し上げました。それはそれは伸びのはやいお方で・・・』 老人の言葉を聞いて、なぜあの男があれほどまでに強いのかが分かった気がした。 『体術、というと、あなたは武道家でいらっしゃいますか?』 『武道家と言っても、まだまだひよっこですわい』 老人は笑って答えた。だが、俺にはその老人が武道家のひよっこには見えなかった。どことなく、あの男と同じ雰囲気を感じる。 『おっと。こんな話をする為に貴方に話しかけたのではなかった。本題に入りましょう』 優しい顔から、一気に真剣な顔へと、老人は変化させた。少しばかりこちらも緊張する。 『実はですの。私を貴方の旅に同行させてほしいのです』 一瞬耳を疑った。こんな若造の、しかもとてつもなく無謀な旅に、まさか希望してついてくる人間がいるとは思わなかったからだ。だが、老人の目は真剣だった。 『なぜ私などに?』 俺の質問に、老人は顔色一つ変えず答えて見せた。 『若いのにも関わらず魔族の征伐をお考えになっている。理由はどうであれ、あなたはこの世界を魔族の物にはさせないとお考えだ。』 まるで心を見透かされたようだった。
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