いざ、東へ

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世の中には変わった人もいるものだ、と思った。結局、断る理由もないので老人を仲間に加えた。名は『導雷』というらしい。 海は驚くほど静かだった。他の船が一隻も見当たらなかったのもあるが、なにしろ魔族が一体も攻めてこなかった、というのが一番の理由だった。 お陰で導雷からは色々な事が聞けた。二人、弟子としてとっていること。『気』という、人間誰しもが持っているエネルギーのこと。そして最後に、彼はこの世界の人間ではないこと。 流石に三つ目は信じられなかったが、彼の話の素振りにはどこか、嘘をついているようには思えない何かが感じられた。 俺が一番興味を持ったのは『気』についてだ。鍛練すれば気とやらは大きくなるらしく、また、それを探ることによって対象者の位置を割り出すことができるという。そして、達人の域に達すれば、それを放出したり、体の一部に集中して貯めることにより、攻撃や防御も出来るそうだ。因みに、導雷は達人の域に達しているらしく、気を使ってでの攻防はお手のものらしい。 一月ほど船を漕いでいただろうか。俺たちは水平線の向こうに大陸を捕え、上陸していた。
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