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港には誰もいなかった。静けさだけがそこにはあり、まるでゴーストタウンだった。
『気は感じますな。どうやら家に引きこもっておる様子』
目をつむり、精神を研ぎ澄ましながら導雷は言った。
『やはりユニコーンによる影響なのでしょうか?』
『そうでしょうな。あちらの方角に、大きな気を感じる。恐らくはそれがユニコーンとやらでしょう』
俺の問いに、導雷は落胆しながら答えた。
『どうしますかな?町で情報を集めてからユニコーンのところに向かいますか?』
今度は導雷が問う。俺は少し考え、そうしましょう、と答えた。
とはいったものの、町人達の用心深さは伊達ではなかった。家のドアを叩き、返事を待つが、中々返ってこない。
『私たちは怪しいものではございませんよ。この地方に取り付く悪魔を征伐しに来たものです』
導雷が落ち着いた口調で言う。相手も警戒が解けたのか、ドア越しに話し掛けてきた。
『今の話・・・本当かい・・・?』
声が少なからず震えている。それは恐怖から来ているのか、突然の安心感から来ているのかは分からない。
『この状況で嘘をついてもなんの特にもなりません。ドア越しでも良いので、ユニコーンについて、色々教えてくださいませんか?』
導雷の説得により、ドア越しの町人は、その重い口を開けた。
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