頼りなき希望

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その光景をまた瞬間、俺は一気に落胆した。折角のカネズルを失ったからだ。 『ったく・・・人の商売相手を勝手に殺しやがって・・・』 化け物の頭をガツンと蹴る。虚しい音が洞窟一帯に広がった。 普通の人間ならここで男の死体にすがって泣き崩れるのだろう。だがこっちは死と隣り合わせに生きている人間。たかだか人間一人が死んだごときで泣いているようでは商売など勤まらない。確かに気の毒には思ったが、泣けるほど悲しくはなかった。 ケルベロスの牙を、東の国で手に入れた剣で切り落とす。なんでもそっちではこの剣を『刀』と呼ぶそうだ。全体的に細めで、切れ味が良い。こいつら魔族の体は馬鹿みたく固く、そんじょそこらの剣で削れば、忽ち剣の方が参ってしまうが、この『刀』はまるで切ることに快楽を覚えているかのように、化け物どもの体をスイスイ切っていった。 ケルベロスの牙、皮を手に入れ、洞窟を出た頃には、地上の人間どもは絶望を顔に出さずにはいられなかったらしく、会う奴会う奴の顔が真っ青になっているのが見受けられた。どうやらあの男が死んだことによって、こいつらは抵抗することを止めてしまったらしい。
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