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穂積さんの自宅に行き、クローゼットの中からそのワンピースを取り出した。
「本当にいいんですか?」
「ああ。なんかアンタの方が未練ありそうだな。違うか?」
あの雨の日に、私が傘を持っていたら、穂積さんが社用車で私を見掛けなかったら、今はこうして一緒にいなかったかもしれない。
もちろん、このワンピースを穂積さんが持っていなかったら、いらないと心に決めていなかったら……
二人で小さく小さく畳んで、紙に包み、そっとそっとごみ箱の中に置いた。
(おわり)
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