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そしてとうとうサッカーグラウンドの前まで来た。熱気球は着地していて、暗い防風林の手前で幻想的に光を放っている。熱気球は1機のみで、大会とかイベントの類ではないようだった。グループで趣味で上げているっぽい。
「乗ってみたかったな……」
健児と別れる前に一度乗せてもらえば良かった。このまま喧嘩別れしたら、熱気球を見る度に健児を思い出す。やっぱり謝って仲直りしようか、でも仲直りしたって、健児にとって私は小さな存在でしかないかもしれない。同僚に紹介されて断れなくて付き合ってるとか、忙しい自分に合わせてくれる女がいないから私で妥協してるとか。
空を見上げる。舞い降りるのは白い羽。
「健児……」
どうしたらいい? そんなことが頭を過ぎる。
「呼んだ?」
「え」
「乗る?」
「え……健児??」
声を掛けられて驚いた。目の前には健児がいた。
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