プロローグ

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運命の人はおろか、自分の姿さえ映さない。 胸より少し上の所にあるリボンに付けられた自分の鏡が怪しく光る。 その鏡にはひびが入っていた。 ひびが入ったガラスで懸命に月明かりを反射している。 鏡はキラキラ輝いていた。 この鏡は時空を映すのだと、亡くなったお母さんが言っていた。 もちろん誰も信じようとはしなかった。 『時空を映す鏡なんて伝説にすぎない、別の世界なんて存在するはずがない。こんなものはただのひび割れた鏡だ』と──… でもお母さんは最後までその意見を曲げなかった。 「大切にするのよ」 と私にこの鏡を託した。
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