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朝。
台所では、包丁のリズミカルな音。
香ばしい魚の焼ける匂い。
ご飯の炊ける匂い。
みそ汁の匂い。
台所に立つエプロン姿の男…は腕時計を見やり
「ったく、そろそろ鳴るのに誰も起きやしない…はぁ~…」
溜め息混じりに言うと
ヂリリリリ♪ヂリリリリ♪ヂリリリリ♪ヂリリリリ♪
家のあちこちから目覚まし時計の音が鳴り響き始めると、
メキッ! カチ。 カチ。 …リリリリ♪
壊れたような音と止めた音と鳴り続ける音。
エプロンを取り、火を止め台所を出る男。
階段を上がり一番奥の部屋〈邪魔したらツブす♪〉と張り紙されたドアを開け、中に入っていく。
写真やフィルムにネガでほぼ床が見えないその中を、当たり前の様に踏み分けて布団のような塊を揺さぶり始める。
「藍(あい)姉ぇ~?起きなよ。朝だよ?目覚まし鳴ったろ?」
「……ゥヴヴ…ゥ」
うなり声が反応している。
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