第 三 章

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「ただいま。」 スーツに身を包み、少し疲れた顔で帰宅したのは、私の旦那様。 「お帰りなさい。」 出迎えた私に、彼は綺麗にラッピングされた六つの箱を差し出してきた。 「今年も食べないの?」 受け取りながらそう問えば、彼は一言。 「当然。」 彼に渡されたのは、バレンタインのチョコ。 会社の女性社員からの頂き物。 彼は絶対に頂いたチョコを食べない。 「で、お前からのチョコは?」 ネクタイを緩めながら催促する彼にちょっと苦笑い。 「食事の後にあげる。」 「着替えてくるから、用意しとけ。」 そう言い残し寝室へ向かう彼に苦笑いが深くなったのは内緒。 着替えを終えて戻ってきた彼は少し不機嫌顔。 「チョコは?」 そして再び催促。 「先に食事。」 「チョコが先。」 譲らない彼に小さく溜め息を零し、冷蔵庫から綺麗にラッピングされたチョコを取り出す。 「…愛してますよ。」 言葉と共にチョコを差し出せば、彼は満足げな笑みを浮かべた。 「知ってる。」  
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