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「ただいま。」
スーツに身を包み、少し疲れた顔で帰宅したのは、私の旦那様。
「お帰りなさい。」
出迎えた私に、彼は綺麗にラッピングされた六つの箱を差し出してきた。
「今年も食べないの?」
受け取りながらそう問えば、彼は一言。
「当然。」
彼に渡されたのは、バレンタインのチョコ。
会社の女性社員からの頂き物。
彼は絶対に頂いたチョコを食べない。
「で、お前からのチョコは?」
ネクタイを緩めながら催促する彼にちょっと苦笑い。
「食事の後にあげる。」
「着替えてくるから、用意しとけ。」
そう言い残し寝室へ向かう彼に苦笑いが深くなったのは内緒。
着替えを終えて戻ってきた彼は少し不機嫌顔。
「チョコは?」
そして再び催促。
「先に食事。」
「チョコが先。」
譲らない彼に小さく溜め息を零し、冷蔵庫から綺麗にラッピングされたチョコを取り出す。
「…愛してますよ。」
言葉と共にチョコを差し出せば、彼は満足げな笑みを浮かべた。
「知ってる。」
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