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霞の背中を見送り、揚羽と刹那に後を追うように指示を出してから俺は怜蘭の横に黒覇を移動させる。
「実際に見て、感じてみてどうであった?」
「主殿……」
進んできた道を見ながら怜蘭は口を開く。その目は力強く前を見据えている。
「あの戦い方は今までの私では決して出来なかっただろうものだ。己が武に酔い、自らを天下無双と称し慢心していた」
言いながら武器を持つ手に力がこもる。悔しいのか、それとも恥じているのかその気持ちは本人しかわからない。
「本当は……わかっていたのだ。自分は天下無双なんかじゃないと。恋や霞と出会って共に月に仕えて力の差を目の当たりにしてからますます理解した。しかし……わかりたくなかった」
笑えるだろ?と苦笑しながら言う怜蘭を、俺は酷く小さく感じた。でも、その火のついた目は変わらなかった。
「だが主殿に助けて頂き、仕えると決めたあの時今までの私は死んだ。貴方を見てこのままでは駄目だと感じた。今の戦いや訓練を見てますますそう思ったよ」
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