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そんな言葉を口にして、テーブルの向かい側に座る男は顔を膨らませていた。
「いっちゃん、最近頑張りすぎなんじゃない?少しはこれ飲んで落ち着きなって」
その拗ねたような、疲れたような顔をする男が視線を動かすと、彼の目の前には蒸気が漂うホットレモネードが目の前に差し出された。
さらに視線を動かすと、へらへらと笑いながら自分をいっちゃんと呼ぶ青年が座るのが見える。
「さっきから愚痴しか聞いてないけど、そんなに酷いの『あっち』の世界は?」
「ん、そうだ。かなり酷い」
男は五分刈りされた頭をかき、それにあわせて青年も自分の頭をかく。
「それで、今日は何のよう?」
「実はな……」
「実は?」
なかなか言おうとせず躊躇う男に包容力のある笑みを見せ、青年は指をくむ。
その白くて細い五指が絡まり、芸術のようテーブルに鎮座するのを見ると、息を呑み込み、男はかるぅく言った。
「実はな、一回世界を壊そうと思うのだ」
時は30分程遡る。
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