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「お兄ちゃん、本当は、………………………」
「もも……?!」
ももは、猛に近づき、キスをした。
でも、この話は誰も知らない。 この瞬間、病室にいた、この二人にしか知るよしもない事実。
あの病室で一体何があったのか、ももは、あれから、猛には会ってない。
「先生、ももちゃん来ましたよ……」
「先生、こんちー」
「今日わ。どう、最近は……。 彼とは上手くいってんの?」
「別れちった……。やらせろ……、てしつこいんだもん……!」
「やっぱり、昔の事思い出しちゃう?」
「そうじゃないけど、全然……、そうじゃなくて……、
えっちだけ、なんて虚しくない……?!」
「そりゃそうよね。なんか飲む? 麦茶しかないけど……」
「有難う……」
こんな風に、他愛もない話をして、本人の顔色等を観察し、隠された心の病を導き出す、それが、私の仕事………。
でも、彼女には、私の目には、いや、外目では、特にそういったものが見当たらない。
でも、引っ掛かる。
猛を刺したのが、レイプされ、逆上したからでなく、もしも、嫉妬心によるもの、だとしたら………?! 誰かに取られたくないから、刺した……としたら、あれだけ深く刺したのも、判るような気がする
「ねぇ、ももちゃん、聞いていい?」
「なに………?」
「ももちゃんは、猛て人、本当は、好き、て事ない……?」
ももは、暫く、望を見つめていたが、いきなり、笑いだした………。
「なにそれ? ももをレイプして、傷付けたんだよ……、ママとも付き合ってたのに……」
やや興奮したのか、ももの目には、涙が溢れていた。
「ママだって、あいつに裏切られたんじゃん…」
「じゃあ、なんで、彼に一人で会いに行ったの?
あの部屋で、どんな話をしたの……?」
「ももが、勢い余って、あんな事になっちゃって……、しかも、あんな体にしちゃったのに、告訴もしなかった……。
悪いじゃん……?
それだけだよ……。
お詫びしに行った。それだけ……」
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