精神科医西山望のカルテ

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(今から3年前、平成9年)   13才の時、男にレイプされ、右背部をナイフで突き刺し、相手の男は下半身不随………。   何故、そこまで深く刺した……?  あの時点で、登山ナイフなんか、何故持っていた……?! バッグも置いたままだったのに……。たまたま、ポケットに入ってたというのか?!  買ったばかりの服に……?!   それから更に10年前、男は、当時3才だった彼女に性的悪戯をしているが、ももは覚えていない、という。   現在、ももは、16才になっていた。   壮絶な惨事から3年、 非行に走る訳でもなく、特別、問題はないが、ずっと彼女の主治医をしている、私、西山望(のぞみ)としては、いまいち、腑に落ちない所があった。   明るく振る舞っているし、あの事件による所謂トラウマとかも見受けられない、ように思われるが、彼女は、細かい部分を忘れているのか、ただ黙っているのか……。   猛をそこまで、深く切り付けた理由、登山ナイフを所持してた理由、  そして、実は、彼女はあれからも、相手の佐々木猛に会いに行ってる。   最初は、母親と共に、謝罪のため、でも、それからも、彼女は何度か、猛の病室に訪れていた事が、最近になって判った。  しかも、一人で……。 刺す程憎い、自分を犯した男の元へ……。
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