短編集

短編集１ 太陽

「君は、接客業が向いてないねぇ」

　その一言が、僕の首を絞める様に響いた。

　小学校、中学校、市立高校。ずっと、平凡な毎日を暮らしていた。

　都立大学に入って、段々と勉強についていけなくなって、挫折して、文句を垂れる母親を殴り、父親の財布をふんだくって、アパートの端にある一室を借りて。

　それで、今まで切々と切り盛りしてた生活を、全て否定する様に、僕の存在を、否定された様な痛みを感じた。

　向いてないから何だ、クビか？　冗談じゃない。何で僕が、クビなんだよ。

　ボロいアパートの、錆びた階段。

　一段一段登る度に、現実を噛み締める様で、辛くなった。