プロローグ

3/4
前へ
/280ページ
次へ
ナレーション・主人公の声 "少し前までさ、オレね、詐欺師みたいな金融屋だったんだ。" 都内、ゴミが散乱する汚い路地裏。 ゴミ箱や袋を蹴散らしながら走り去る債務者を、追い詰める折原学(おりはらまなぶ)。債務者は時折り学の方を振り返り、さらに逃げようと、道なき道を足掻く。 ナレーション “準禁治産者(多重債務者)、禁治産者(破産者、債務整理又は特定調停中の者)を相手に法外の金利で金を貸す闇金融…そんなところで働いていたのがオレ。多重債務者(コイツら)と比べてどっちがよりゴミかなんて…もうだいぶ前に、わからなくなっちまった。” 路地裏がきれるのがわかる債務者、安堵の表情になる。大通りに債務者が出た所で、待ち構えていたガッチリした大男、葛之葉大二郎(くずのはだいじろう)がラリアートをし、債務者を倒す。喉を強かに打った債務者は、苦しげに踠く(もがく)。 ナレーション “そこで働こうと思ったきっかけは単純だ、オレには金がいるんだ。どうしても大金がいる。用意できるなら、早いほどいいね” 苦しげに踠く債務者を気にも止めず、首根っこを乱雑につかむ葛之葉。空いている片手でタバコを取り出し、火をつけると、咥えタバコで紫煙を燻らせ(くゆらせ)ながら、再度路地裏へとズルズル引きずっていく。 ナレーション “何?私利私欲にまみれた、最低な野郎だ?欲望の権化だ?知ってるよ、さっき言っただろ?オレがゴミクズだって。” 路地裏の中ほど、合流した学と葛之葉はハイタッチする。暴れる債務者を、力任せにビルの壁に叩きつける葛之葉。痛そうに恐怖にすくむ債務者を気にも止めず、学は懐から数枚の紙(金銭消費貸借契約書及び公正証書等付属紙)を取り出す。 ナレーション “大金が必要な理由?…人にあんまり言いたくないんだよ。誰だってあるだろ?そういうの。“ 『松崎さん。契約を履行せずに逃走されては困ります。期日までに履行して頂かないと』 学は紙を債務者の眼前に叩きつける。松崎と呼ばれた債務者があうあう何か言っているが、小さすぎて聞こえない。再度壁に叩きつけ、「よく見ろ」と、葛之葉はドスの利いた声で債務者に言う。 ナレーション ”何?どうしても聞きたいって?…そうだなあ…オレ、親とうまくいってなくてさ…“ 『契約は履行しない、いいえそもそも貴方は理解していない、金も返さない、電話にも出ないし留守電にも応えない、私が何か言う前に逃走する、耳も貸さない、以上です。貴方に正義は何一つありません。反論は?』 ナレーション ”あと、親とは別に大きな借りがある人がいるんだよ。昔世話になった人にね。…アンタにだって、いるんじゃないの?そういう人“
/280ページ

最初のコメントを投稿しよう!

47人が本棚に入れています
本棚に追加