ヒ コイ

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  「終電を逃した」と我ながら下手すぎるといえる嘘に、真夜は「そうですか」とだけ言って家の中へ招いてくれた。 一つ年下の真夜は一人暮らしをしている。 最寄り駅から10分もかからないこのマンションは大学の近くにあり、さすが駅近というか、高級感がある。 俺がこの家に来たのは三回目。 二回目とのその間に、もう二、三ヶ月は経っている。 「悪い、夜遅くに」 「いえ、真夜まだ課題終わってなくて、今日は寝ないつもりでしたから」 ゆっくりと微笑む真夜は、ウチの大学でかなり有名な方だ。 容姿も整っていて、男女共に誰もが彼女を見てしまう美しさ。 それなのに真夜は、本当に性格がいい。 美しさに合う綺麗な言葉遣い。 誰にでも敬語をしてしまうのは、高校の時に茶道部だったか華道部だったか忘れたけど、そういう武道系だったかららしい。 そんな彼女が、俺は好きだった。 「何か飲みます?」 「あー…コーヒー」 「なんか久々ですね。お豆あったかなー」 真夜は、俺に対しては少しだけ言葉を崩す。 真夜のコーヒーはうまい。わざわざ豆から作っているから。 初めて来た時飲ませてもらったコーヒーは絶品で、かなり感動した。  
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