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「気をつけていくのよー」
相変わらずの、のんびりとしているが凛とした声でいつもの決め台詞を言う母親が近頃少しだけうざったい。
「わーってるって。俺はもう子供じゃねぇんだから」
少年はそんな事を思いながら、偉ぶった返事を母親に返した。
ゴンっ
少年の頭に突然、衝撃が走る。
「いってぇ!畜生~何すんだ、このクソ姉貴ッッ!!!!」
「てめぇ、一馬!母さんになんて口の聞き方だっ!あとてめぇはガキだろうがっ」
容赦ない罵倒を浴びせたのはこの生意気な口を叩く一馬少年の姉である。
「こらこら、千恵も一馬も玄関でケンカしないで。幸せが逃げちゃうわ」
自分の言葉が事の原因でもあるのだが、元よりマイペースな一馬の母親はそんな事を気にしない。
「……何だ、出掛けるのか?」
後ろの方から眠そうな声が聞こえてくる。一馬たちの父親である。
「ああ!近くの川でロケット飛ばすんだよ。親父は今から仕事か?」
母親に喋りかけられた時と違い、随分と嬉しそうに一馬は返した。
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