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一刀「な、何だ? 突然……」
全身が痛い。
空気が湿っていて、何故か薄暗い。
さっきまで、たしかに陽の光の下を歩いていたのに、今では天井から僅かな光が差し込んでいるだけ――。
一刀「――!」
上を向いただけで、今自分が置かれている状況が瞬時に理解できた。
ヤツが俺を見下ろしていたからだ。
昨日のことのように思い出せる、口が左右に裂けているんじゃないかというぐらい三日月形の笑みを浮かべて。
一刀「け、桂花っ!」
桂花「何を気安く私の真名を呼んでいるの、アンタは」
一刀「……」
桂花、だぶんその声音は女の子が出してはいけないレベルだ。
地を這って近づいてくる闇を感じさせる。
一刀「あー、穢らわしい。演技とはいえ、アンタなんかに抱きつくんじゃなかったわ。下賎な生き物に触れたせいで、私の気高い知性が少し侵された気がするもの」
上から砂が降ってきた。
間違いなく桂花がかけているのだろう。
桂花「3年経っても相変わらず、低俗で低脳で煩悩の塊なのね。こうやって話しかけてやっているだけで、吐き気がするわ」
しかしこの穴、めちゃくちゃ深いな。
一刀「私の計画とはいえ、ここまで上手くいくとはね。アンタが戻ってきたっていう知らせを聞いた時からここまですべて、アンタは私が予想した通りに動いてくれたわ」
手を伸ばして、やっと半分ぐらいの高さまでしか届かない。
桂花「ちょっとっ! 聞いてるの? それともゴキブリには私の高貴な言葉は理解できないのかしら」
また砂をかけてくる。
桂花「3年……、3年もこの時を待ったわ。アンタを地獄の底に叩き落すこの日をねっ!」
地獄にしてはずいぶん浅いな。
桂花「今回の落とし穴は完璧な設計よ。一度落ちたが最後、アンタの身長と運動能力では絶対に這い上がれないわ」
その設計能力と分析力はもっと違うことに使え!
桂花「真桜に作らせた道具を使ったから、穴の中も綺麗でしょう? 何処にも手足を引っ掛ける場所はないわよ?」
民の血税をこんな無駄な土木工事に使うな!
そして真桜――今度会ったら俺のドリルでお仕置きだな。
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