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暖かい春の日。
今日は屋敷の子供の6歳の誕生日。
お祝いの準備が庭で進められていく。
その準備を自ら手伝う主役の男の子。
楽しそうに笑うその子供や、屋敷の人達の中に、1人さびしそうな瞳をした小さな小さな男の子が、庭の端で人々が準備をする姿を見ていた。
その子はもう1人の主役の男の子。
でもその子の名前はバースデーケーキのチョコレートプレートには書かれていなかった。
皆その事など気にも止めず準備を進めていく。
"今日はお祝い。光さまのお誕生日"
"沢山プレゼントを用意しましたよ。光さまのためだけのお誕生日プレゼント"
"今日の主役は光さま。あなたのためだけのお祝い事です"
そんな言葉が行き交う庭で幸せそうに笑う光さまと呼ばれた男の子。
"ねぇ、あやのプレゼントは?。あやだって今日は主役でしょう?"
庭の端にいた男の子を指差しながら首を傾げる光。
使用人達はそれを見るとクスクス笑いはじめた。
"綾さまにお祝いは要らないんですよ?"
"そうですよ。綾さまには要らないんです"
話し声が聞こえたのか、綾と呼ばれた男の子はその場から立ち上がると裏庭の方へと走っていってしまった。
その事を気にもせず、使用人達は祝いの準備を再開する。光に習い、準備を手伝いはじめた。
彼らに綾の涙が見えていただろうか‥?
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