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まるで音楽を奏でるかのように、二人を取り巻く風に吹き荒れ音を発する木々達。
歌声の様な風、楽器の様な木々。それを見た瞬間、綾の表情は今までにない程の笑顔を浮かべた。いや、笑顔になること事態初めてかもしれない。
綾の笑顔を見た麗は、その笑顔を待ち望んでいたかのように嬉しそうに微笑む。
『やっぱり、綾がパートナーだったんだな。』
そう言って、麗は綾の頭を優しく、優しく撫でてやり、再び抱きしめる。綾は少し驚いたような表情をしたが、直ぐに柔らかい笑顔になり麗に抱き着いた。
直後、二人は胸に激しい熱が走る。
熱に幼い綾は耐え切れなかったのだろう、声にならない悲鳴をあげ、気絶する。それとほぼ同時に、二人を包んでいた風が静かに消え去った。
気絶してしまった綾を優しく抱き上げ、背中を軽くさすってやると、熱のせいで苦痛の表情を浮かべていた顔がスゥッ‥と、穏やかな表情になり、小さな寝息が聞こえ始めた。
『小さな俺のパートナー。これからは俺が側にいるからな‥』
聞こえるか聞こえないか解らない程の声でそう呟くと、麗は綾を抱き抱えたまま、風の中に姿が紛れる。
先程の風や木々のざわめきに驚いた屋敷の使用人、両親、光がその場へ駆け付けたが、時既に遅し、麗と綾の姿は何処にも無かった。
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