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「ここがあの織田信長が築いた安土桃山城跡です。では3組の皆さん!!ここで写真とりまぁす。」
俺の名前は時生 渉(わたる)。京都の高校に通う17歳。今日から修学旅行で岐阜にスキーに行く予定だ。今はその途中で滋賀に立ち寄ったってわけ。
「はい!!じゃあ写真とりますねぇ~。笑って~はいっチーズ!!」
カシャ
「わた…る」
シャッターが降りる音と同時に、どこか遠くで俺を呼ぶ声がした。
渉は隣にいた山根に声をかけた。山根は渉の幼少の頃からの知り合いである。
「山根ぇ。今俺の名前呼ばんかった?」
「はぁ~?なんで時生の名前呼ばなあかんねん。俺は呼んでないよ。」
「そうか…ごめんなんか勘違いみたいやわ。」
渉は納得のいかない表情を見せるが、そのままクラスの列に混じって歩き出した。しかし、その時またあの声が聞こえる。さっきよりもはっきりとした声で。
「わたる!!!!!」
「山根!!聞こえたか?今はっきりと聞こえた!!」
「何も聞こえへんよ!!お前さっきからどないしてん。」
「どっかで俺を呼ぶ声が…うっ!」
渉は頭を抱えて膝をついた。頭の中からハンマーで叩かれたような激痛を感じる。
「渉…どうしたんや!!頭痛いんか?」
「ごめん…なんか頭がめっちゃ痛い…!!バスに頭痛薬あるからもってきてくれへん?俺あそこの売店で水買っとくからさ…。」
「わかった。水買ったらここで待っときぃや?」
「ありがとう。」
山根はバスが停留している場所まで走っていった。
「わたる!!…わたる!!」
「誰やねん!!さっきから俺の名前を呼んでるんわ…!!うぅ…頭が……頭ん中で聞こえる…!!」
「わたる!!早く来るんだ……わたる!!」
「うわぁぁあぁあぁ!!!!!!」
渉は絶叫した。その瞬間、目の前が真っ白になり、渉は気を失った。
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