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時間は少し戻り、河原村入り口──
「はぁ…はぁ…斬っても斬っても後ろから現れやがる…!!」
「どうした…兵之助よ。息があがっておるぞ。」
『手応えは確かにある。間違いなく斬っている筈なのになぜだ…!!』
「不思議だな兵之助。手応えはあるのに…間違いなく斬っているのに…そう考えておるな。」
「…!!」
「貴様は既に私の幻術の中。つまり貴様は私の世界の中にある。全ては私の意のままである。」
「幻術…!!催眠術に化かされたってことか…。」
「お前には消えてもらおう。」
大和が刀を抜く。
「まだ終わっちゃいねぇぜ…!!」
「強がるな。」
兵之助は刀を自分の太ももに突き刺した。
「ぐっ………。」
「馬鹿な!!…狂気の沙汰か!!」
兵之助の耳には先程まで聞こえてこなかった、手下たちの声が聞こえてきた。
『やはりそういうことか…。』
「ふん…幻術を解いたようだな。」
大和は刀を構える。
「もう二度とかからんわっ!!!」
兵之助は太ももから刀を抜き、構え直す。
「笑止…立っていることがやっとの貴様に何ができる!!」
大和が刀を構え、兵之助に駆け寄る。
「大和ぉ…飛ぶ斬撃を見たことがあるか?」
兵之助が異様な構えをする。
「飛燕奥義!!高波っ!!!」
ゴォオォ!!
兵之助が振り抜いた斬撃が大和にまで伸びる。
スッ
「!!」
「何をした…。痛くもかゆくもないわ。」
「真の斬撃とは、余計な物は傷つけない。切りたい物だけを、綺麗に切る。…故に切り口が開くまでに少しばかり時間差が生じる。」
ズバッ!!!
「かはっ!!!」
大和は両膝をついた。
キンっ
兵之助は刀を鞘にしまった。
「その傷では死なぬであろう。生き恥をさらせ。」
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