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浅井長政の城──
「長政様…正気ですか!!あの信長を裏切るなど…。」
「仕方あるまい。…信長殿よりも、朝倉家との親交の方が深い。」
「しかしお市様が…!!」
「長政様どうされたのですか?」
小柄な女性が入ってくる。顔は少し童顔であるが綺麗な顔立ちをしている。
「おぉ…お市…!!」
「また戦ですか?」
「あっ…あぁ。それよりお市…今は重要な話し合いをしておる。女は入ってくるな…!!それにお前はじっとしていなさい。」
お市は自分のお腹を撫でる。
「このやや子ですか?…わかっております。しかし長政様…この子の為にも、戦はお止めください…。」
「お市…わかっておる。しかし此度の戦はかなり重要でな…。」
お市は長政の前に広げられた地形図や陣形図を見る。
「長政様!!!!それは兄上の城や国では御座いませんか!!!!」
長政は慌てて地図を閉じる。
「い…いやこれはな。」
「おやめください!!!だいたいの察しはつきました。兄上を裏切るなど断じて許されませぬ!!」
「…お前が信長殿を裏切れぬように、拙者も朝倉殿を裏切れぬのだ。」
「……どうにかならぬのですか?出陣しなければよいでしょう。」
「そうは行かぬ。……朝倉殿につかなければ、信長殿につかなければならない…そうなると朝倉殿を裏切ることになる。それにどっちにもつかなければ、浅井家の家紋に泥を塗るようなもの!!…そうなっては面目が…」
「面目なんて捨ててしまいなさい!!!」
「…は?」
「つまらぬ意地や面目など、いりませぬ!!!!」
「男には…男には引き下がれぬ時があるのだ。」
「長政様…見損ないました。」
お市が部屋を出て行く。
「お市様…。」
「放っておけ。」
長政が立ち上がる。
「直ちに出陣の準備を!!!信長殿が越前に入り、朝倉殿との戦が始まり次第、背後を襲う!!」
「……はっ!!」
『お市…すまぬ。』
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